絵に書いたような

絵に書いたような風景

木星(もくせい)は太陽系にある惑星の1つで、内側から5番目の公転軌道を周回している第5惑星である[2]。太陽系の中で大きさ、質量ともに最大の惑星である[7]。

概要: 木星 Jupiter, 仮符号・別名 …
木星およびそれと同様のガスを主成分とする惑星(ガス惑星)である土星のことを木星型惑星(巨大ガス惑星)と呼ぶ[8][7]。かつては天王星海王星木星型惑星に含まれていたが、現在ではこれらの二惑星は天王星型惑星(巨大氷惑星)に分類されている[7]。

木星は古代から知られ観測されてきた。そして多くの文明で神話や信仰の対象となった。英語Jupiter(ジュピター) は古代ローマ神話の神ユーピテルを語源とする[2][9]。
軌道
 
公転
太陽からの平均距離は7.78×108キロメートル(約5.2 au)である。仮に直径約1.4×106キロメートルの太陽を直径1メートルの球とすると、木星は約560メートル離れたところを周回している[10]直径10センチの球となる。周期は11.86年であり、これは土星の5分の2に相当する。したがって、太陽系にある2つの巨大な木星型惑星は、その周期が軌道共鳴5:2の関係にある[11]。
自転
木星の赤道傾斜角は非常に小さく、3.13度しか傾いていない。この結果、惑星上には有意な季節変化がほとんどないと考えられる[12]。木星の重力加速度は24.79m/s2であるが、木星は約10時間という猛烈なスピードで自転しており大きな遠心力を生じるため、重力がいくぶん相殺されて赤道上での重力加速度は23.12 m/s2に減少する。また、この大きな遠心力は木星そのものの形状にも影響を与えており、赤道方向の直径が自転軸方向の直径よりも7パーセント程度(9,275キロメートル)膨らんだ楕円球の状態にある[13][14]。

視認できる惑星表面が固体ではない木星では、上層大気の差動回転が確認される。極域の大気は、赤道部分の大気よりも回転時間が5分長い。木星の自転は、大気の動きなどに則した3つの系(システム)に分けて説明される。システムIは赤道を挟んだ南北10度の領域で、もっとも速く9時間50分30秒で一周する。システムIIはIを挟む南北部分の中緯度にあたる領域で、周回時間は9時間55分40.6秒である。システムIIIは電波天文学によって定義される惑星磁気圏の回転を指し9時間55分29.37秒で一周し、固体核の自転周期と同値と考えられシステムIIIが木星の公式な自転とみなされている[15][16]。
物理的性質
 
大きさ
地球と木星の大きさ比較。大赤斑は地球のおよそ2~3個分の大きさである。
直径は、太陽の1/10で地球の10倍ほど。大赤斑は地球規模の大きさ。
太陽系の中で、木星は太陽に次ぐ重力中心であるが、半径比は10パーセントに過ぎない。それでも、その質量は太陽系の木星以外の惑星すべてを合わせたものの2[2]- 2.5倍ほどに相当する。そのため、太陽 - 木星系の重心は太陽の内部ではなく、太陽半径の1.068倍の位置に相当する太陽表面付近にある[17][18]。なお太陽系全体の重心への寄与は木星が49%、土星が27%であり、主にこの2惑星の位置によって太陽系の重心は太陽内部に出入りする[19]。地球との比較では質量は318倍、直径は11倍、体積は1,321倍ほどある[5][20]。半径は太陽の10分の1に等しく[21]、質量は1000分の1である。密度は両者でほとんど差はない[22]。木星質量はMJまたはMJupで表され、太陽系外惑星褐色矮星などの天体質量を表示する単位にも用いられる。例えば、オシリスの質量は0.69MJ、CoRoT-7bは0.015MJである[23]。

理論モデルによれば、もし木星質量が現在の質量よりもある程度大きかったならば、木星は増大した重力によって現在の大きさよりも逆に縮んでいたと考えられる[24]。少々の差異では半径に影響を及ぼさないが、地球質量の500倍、木星質量の1.6倍程度重かったとすると[24]、重力の増大によって木星内部の密度が高まり、構成物質の増加に反して体積が小さくなると考えられる。質量増加によってかえって半径が収縮する傾向は、木星の50倍程度重い褐色矮星の領域まで続くと考えられている[25]。

木星が恒星として輝くには、水素を中心として現在の75 - 80倍[26]程度の質量がなければならないが、半径で30パーセント程度大きければ赤色矮星にはなり得たという[27][28]。

木星は、太陽輻射で受ける熱よりも多い熱量を放射している。木星表面の温度は 125Kであり、これは太陽光エネルギーだけで計算される温度102Kよりも高い[26]。この差は木星内部で生成される熱によるものであり、太陽から受けるエネルギー量に匹敵する[29]。この熱の一部は、ケルビンヘルムホルツ機構(Kelvin–Helmholtz mechanism)と呼ばれる断熱過程で生じるもので、この過程によって木星は年間2センチずつ縮んでいる[30]。逆に、誕生時の木星は現在の2倍程度の大きさがあったと考えられる[31]。
内部構造
木星内部構造の想像図。岩石質の中心核を厚い金属水素の層が覆っていると考えられている。
木星の内部構造は、中心にさまざまな元素が混合した高密度の中心核があり、そのまわりを液状の金属水素と若干のヘリウム混合体が覆い、その外部を分子状の水素を中心とした層が取り囲んでいるものと考えられる[30]。ただしこの構造は外見上からの想像に過ぎず、はっきりと分かっていない。

中心核はケイ素など岩石質ではないかと想像されているが、その構造は温度・圧力の状態と同じく分かっていない。1997年の重力測定[30]に基づく中心核の規模の推定には様々なものがあるが、質量は地球の11 - 45倍で、木星質量全体の3パーセント - 15パーセント程度を占めると考えられる[29][32]。仮に木星成分が太陽と同じならば、岩石質の中心核は地球の5倍程度になるが、密度から計算するとその大きさは15倍程度となる。これは、巨大ガス惑星といえど太陽系の元素組成よりも水素やヘリウムが少ないことを示す[33]。この中心核は、惑星形成モデルから予測される原始太陽系星雲からの水素やヘリウムの集積が行われた際、同様に岩石や水の氷も木星の初期形成時に集まったと考えられる。この核が予測どおり存在するとすれば、それは液体状の金属水素が起こす対流の中に混ざり込んだ物質が惑星内の深層部分に集まって形成されたことになる。この中心核は、現在では固まっていると思われるが、活動している可能性を完全に除外できるほどの観測結果は得られていない[30][34]。

中心核の周囲には、微量のヘリウムや水の氷を含む厚い水素の層が広がっている[2]と考えられ、それは木星半径の78パーセントに相当する[29]。深い部分は液体の金属水素が4万キロメートルほどの層を成し、その上部にはやはり液状の水素分子が約2万キロメートルの厚さで覆っている[35]。表面部分の深さでは、温度は水素の臨界点である33Kを上回っている[36]ため、水素は液相と気相を区分する境界が存在しない超臨界液体状態にあると考えられる。しかしながら、上層部では水素はガス状であり、1,000キロメートルほど下がると雲状の層となる[29]。そして層の下部では液状になっている。これらに明らかな境界は存在しないが、深くなるにつれ徐々に熱を持ち濃度も高くなっていく[37][13]。

木星の内部モデルは確立されておらず、これまで観測された諸元値にはばらつきがある。回転係数J6の1つが惑星の慣性モーメントから赤道半径、1気圧下での温度を説明するために用いられていた。2011年に打ち上げられ、2016年に木星に到着した探査機ジュノーでは、これらの値を絞り込む役割があり、その結果から中心核についての課題解決が進むことが期待されている[38]。
温度
木星の赤道傾斜角は、3.08° - 3.12°と水星に次いで小さく、自転軸がほぼ垂直である。このため、地球などに見られるような、気象現象の季節変化はあまりないと推測されている。ところが、木星表面の温度は極部分と赤道部分でほとんど差がない[39]。さらに木星の表面温度はマイナス140°C程度だが、これは太陽からの輻射熱だけで計算される マイナス186°Cよりも高い。このようなことから、木星は内部から熱を発していると考えられる[39]。太陽から受ける熱量の2倍に相当する熱量の熱源は、水素より重いヘリウムが中心に沈む際に生じる重力エネルギーではないかと考えられている[39][40]。

木星内部の温度と圧力は、内部に向かうほどにどちらも高くなる。水素が臨界点まで加熱され相転移を起こす領域では金属水素が形成されるようになるが、その領域の温度は1,0000K、圧力は 200GPaに達すると考えられる。金属水素層の底で温度は20,000K、圧力は3,600GPa[35]、中心核では、温度は36,000K、圧力は4,500GPaに至ると見積もられている[29]。
大気
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ボイジャー一号が撮影した木星大気の帯と大赤斑の動きを捉えた画像(フルサイズ画像)
詳細は「木星の大気」を参照
木星の上層大気は、ガス分子構成比で88 - 92パーセントの水素と8 - 12パーセントのヘリウムガスが占める。元素単位でヘリウムは約4倍重いため、重量比では水素75パーセント、ヘリウム24パーセント、他が1パーセントである。内部は含まれる重い元素の比率が高まり、全体の重量比では水素約71パーセント、ヘリウム約24パーセント、他が5パーセントとなる。大気にはわずかなメタン、水蒸気、アンモニア珪素化合物も含まれる。また、観測からエタン、硫化水素、ネオン、酸素、硫黄も確認された。大気最外層には凍ったアンモニアの結晶が漂っている[41][42]。また、赤外線や紫外線測定から、微量のベンゼンやほかの炭化水素の存在も確認された[43]。

大気における水素とヘリウムの存在比は、原始太陽系星雲の理論的構成に近い。しかしネオンは5万分の1と太陽が含む量の約10分の1程度しかない[44]。ヘリウムの比率も太陽の80パーセント程度と少ない。この大気上層におけるヘリウムやネオン比率の少なさから、これらの元素が降水のように金属水素の層へ沈殿し、惑星内部に沈みこんだ結果という説がある[45][46]。

木星は太陽系惑星の中でももっとも厚い5,000キロメートルにわたる大気層を持つ[47][48]。木星には固体の表面が存在しないため、惑星の領域は、大気が10気圧または地球表面の10倍に相当する大気圧の部分からと考える[47]。
雲の層
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木星の雲の帯が動く様子。この図では、木星の球型表面を円筒に投影し、720 × 1799ピクセルで表す

木星の南の極

木星の南極の雲に色付けした画像
木星は常時雲に覆われており、可視光で観測される表面は固体の地面ではなく雲の表層である[35]。この雲はアンモニアの結晶や、可能性としてアンモニア水硫化物で作られたものと考えられる。これらの雲は対流圏界面に浮かんでおり、特に赤道域に相当する部分では緯度ごとに異なる流れを起こしていることが知られている。この流れは比較的明るい「帯、ゾーン(zones)」と暗い「縞、ベルト(belts)」に分けられることもあり、それぞれの部分にある物質が太陽光を反射する具合でこのように見える[49]。これらの部分は赤道と平行に、東向きと西向きに交互に流れており、間に働く相互作用は複雑な大気循環を引き起こして嵐の渦や乱流などの現象を発生させる[49]。ゾーンやベルト部分のジェット気流は、風速100m/s(360km/h)にも達する[50]。このゾーンやベルトは幅や色また風速などを毎年変化させるが、観測者の眼には識別し名称をつけるに充分な識別が可能なほど、その個別特徴を保つ[20]。

雲の層は厚さ50キロメートル程度に過ぎない。しかもそれは少なくとも、低部の厚い層と高所の薄く目立つ層の2構造を持っている。さらに、アンモニアの雲の下には薄い水の雲が存在すると予想される。木星の雲の中では稲妻の光が見つかったが、これには極性分子である水が引き起こす電離作用が必要である[29]。水の雲は惑星内部から供給される熱を受けて、雷のエネルギーを蓄積する[51]。この放電現象は地球の稲妻の1,000倍にも相当する大規模なものである[52]。

木星表面に見られる雲のオレンジ色や茶色は、内部から湧き上がった化合物が太陽の紫外線によって変質し色を変えたものである。詳細はいまだ判明していないが、リン、硫黄、炭化水素類が成分だと考えられている[29][53]。発色団(chromophore)として知られるこれら多彩な化合物は、比較的暖かい雲の下層で混合される。これが対流細胞(convection cell)の湧き上がりによって、上層を覆うアンモニア結晶の雲の上に昇ってくることで、色を持つ層が表面に形成される[54]。

木星は赤道傾斜角が小さいため、両極部分は赤道部分に比べて常に太陽光をあまり受けない状態が続く。そのために熱量を極に向かわせる対流があると考えられるが、それはあくまでも惑星内部で起こっており、観測できる雲の層では温度は釣り合っている[20]。
大赤斑
詳細は「大赤斑」を参照
ボイジャー1号が1979年2月25日に、920万キロメートルの距離から撮影した木星大赤斑とその周辺。この写真では大きさ 160 km 程度の雲も識別できる。左側に見られる多彩な波状の雲がつくるパターンの部分は、波動が複雑に変化している領域である。大赤斑の直下にある白い楕円形の嵐の大きさがほぼ地球に等しく、ここから被写体のスケールを判断できる
木星を特徴づけるものに、赤道から南に22度の表面に確認できる大赤斑がある[49]。周囲の温度が2度程度低いことからこれは高気圧性の嵐と考えられる[55]。

この大赤斑は地球からも口径12センチ以上の望遠鏡があれば視認することができ[56]、少なくとも1831年には確認され[57]、さらにさかのぼる1665年には存在したと考えられる[58]。これほど長期間にわたって維持されるメカニズムは解明していない[2]。過去には地殻の突起部分が影響しているという説や、ソリトンではないかという説もあったが、現在では巨大な台風と考える説がもっとも無理が少ない[55]。

計算では、この赤斑を作る嵐は安定しており、今後も惑星が存在する限り消えないとも言われていたが[59]、20世紀後半から21世紀初頭の観測により年々大きさが縮小していることが明らかになっており[60]、2014年5月15日、大赤斑が1930年代以降の観測史上最も縮小していることがアメリカ航空宇宙局から発表された。このまま縮小が進むと21世紀の中頃には消滅すると考えられているが[61]、一方で大赤斑の見た目は縮小しているもののその原動力となっている渦は存在し続けており、消滅の危機にあるわけではないという見解も存在する[62]。

この楕円形の大赤斑の寸法は、長径2.4 - 4万キロメートル、短径1.2 - 1.4万キロメートルであり、地球2 - 3個がすっぽり納まる[63]。もっとも盛り上がっている箇所は周囲よりも8キロメートル程度高い[2][64]。反時計回りに回転しており、6日間かけて1周する[65]。

2000年、南半球上に小さいながら大赤斑と同じものと見られる特徴的な大気現象が現れた。これは、もっと小さく白い楕円形をした複数の嵐が合体し1つとなったことで形成されたもので、これら小規模な現象のうち3つは1938年には存在が確認されていた。この斑はオーバルBAと命名され、また赤斑ジュニアのあだ名がついた。その後この斑はさらに強大になり、その色も白から赤へと変化した[66][67][68]。
磁気圏と磁場
木星の磁場の強さは地球磁場の14倍に相当する。磁力は赤道部分で4.2ガウス、極部分で10 - 14ガf:id:jirohorie26269:20200521121651j:image